今の世で結婚したりすれば、9割9分がた「カカア天下」になる。
日々尻に敷かれている女房に戦々恐々とし、「亭主は元気で留守がいい」などとほざかせる。
それほどにも夫がおとしめられるのも、いまの世の中での仕事などが犯罪尽くめだから。
その内実が概ね、不当利得の溜め込みを目的としたサービス業で、到底妻子に誇れるようなもんじゃない。
だから夫に対して不遜な妻や、親に対して傲慢な子供だって黙認するしかない。
犯罪を生業としているような男にとっての身から出たサビであり、どこまでいっても自業自得であり、
だからといって救われることももちろんない。むしろ、強盗殺人で妻子を食わせるような悪行に
走ったがために身を滅ぼし、家を蔑ろにし、国を売って天下を乱す、乱世の元凶ともなっている。
君臣父子夫婦の三綱を正してこそ「天下の大経の経綸」となり、その逆をいけば当然天下は乱れる。
三綱を正せるほどにも真っ当な仕事に就いてこそ、修身斉家治国平天下となって世も治まる。
そのためには「犯罪でもいいからとにかく働いておけ」という、アダムとイブの楽園追放寓話を典拠
とする絶対労働強制化や、夫のヨセフの知らぬ所で不倫してイエスを身ごもったマリアを崇めるような
父子夫婦の序列を乱すカルト教義への信仰も辞めることだ。そんなものを信仰し実践しているからこそ
カカア天下でしかいられないのであり、入獄後には自らの妻を中国男の妾か、アラブ男の第五夫人あたりに
してしまう。犯罪者の夫が無事でいられないのはもちろんのこと、その妻だって悲劇の運命をたどる。
男のほうは半ば地獄行きを覚悟していることから、女のほうにこそ破滅の苦しみもジワリとのしかかる。
「身、道を行なわざれば、妻子にも行われず。人を使うに道を以てせざれば、妻子をもつかうこと能わず」
「自分自身が道理を行わないのでは、一番身近で、命を与えてやっている妻子にすら道理は行われない。
道理から外れた使い方をすれば、妻子ですらその命令に従わず、使うこともできない」
(権力道徳聖書——通称四書五経——孟子・尽心章句下・九より)
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