
刀も本当は「寝刃を合わせる」といって、目の粗い砥石で刃先を鋸刃化した、
刃紋の美しさもへったくれもないような荒砥ぎの状態で実戦には用いる。
画像のようなツヤツヤに研ぎ上げたものは美術研磨といって、実用研ぎと比べれば
見栄えはいいが切れ味に劣り、実戦にも全く使えないわけではないが甚だ不利となる。
それでも、戦国期に銃砲のために発達した火薬技術が花火に応用されたのと同じように、
平和な時代には刀剣もまた実用品以上に美術品としての用途をより強め、刀そのものの
良さだけでなく、研ぎの良さやその保存性の良さが品評の対象ともなり始めたのだった。
刀をしょっちゅう錆びさせては研ぎに出すような者は不届き者の典型として扱われ、
「寝刃を合わせる」も悪だくみを意味する慣用句として定着するようになった。
実用面だけでなく、愛好面でも文化性が高められていったという点で、
日本刀はやはり別格の存在であり、どちらかを肯定して一方を否定するような一つ覚えを
排することが、中庸にかなった精神性の醸成を促す点もまた、秀逸なところだと言えよう。
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