あの、野蛮と妖艶を極める物騒大国のロシアでも、
刀を贈答品にするのは好まれていない。
日本では江戸時代まで、刀を贈り合うのが頻繁化し過ぎていたために、
徳川吉宗が倹約のため高価すぎる刀を贈刀にするのを法度で禁止したほどだが、
これは単なる験担ぎなどには止まらない、実相からの文化的相違があってのこと。
刀身を銃弾などと同じ消耗品として捉えている欧米社会では基本、
刃物の美しさを愛でるような慣習がなかったし(刀装具の美しさを愛でることはある)、
武器に強さと美しさの止揚を求めたりすること自体が前代未聞のことだったから。
武器の美しさなどを仮に追求してみたところで、
強さ一辺倒の野蛮な男にも、性的な美しさ一辺倒の妖艶な女にも
取り立てて好まれることがないから、そもそもの需要が始めからありもしない。
まず、性的な美しさに溺れる色情を忌む貞操観念が世を挙げて重んじられた上で、
それを武具の美しさのような方便によって守ろうとする工夫が加味されたことにより
日本刀のような美麗を極める刀が産まれ、それが贈答品としても好まれるに至った。
どちらかといえば、ロシアよりも日本のほうが世界的に稀有な事例だが、
この世に日本刀が実在している以上は、日本の側が遠慮する必要などはないことである。
(日本ほど高品質な刀を鍛えてきた歴史のない朝鮮がどうであるかは知らないが)
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