戦後における、日本人の西洋的耽美を推し進める
最大級の代表者となったのが他でもない、あの三島由紀夫である。
右翼の精神的支柱だとか、近代最後の文豪だとかのイメージが強いが、
それらと同時にどういうわけだか本人が好んでいたのが、西洋的な肉体美。
おそらくは西洋的美と東洋的美を混同しながらの唯美主義によって、
東洋文化からはかけ離れるような裸体美の追及にも及んでいたのである。
三島の愛国論や日本文化への賛美自体は見るべきものも多いのに、
このような悪趣味極まる肉体主義と抱き合わされたせいでクソミソに
それらのイメージも悪化し、保守が鼻摘まみ者扱いをされる原因ともなった。
本人が憂慮していたとおり、古来の日本人の精神性は年を重ねるごとに衰退
して行ったが、三島もまたその原因を作った一員であることには変わりない。
小柄で文弱だった三島が下手の横好きでひけらかしたボディビルなどの
肉体主義志向自体は、また別のところでろくな精神性を帯びたりすることも
ない形で興隆し、その点では本人の好みが部分的には受け入れられたともいえる。
東洋的美と西洋的美が到底相容れないことをその体現によって示し、
ほとんどの日本人に前者を棄てて後者を採ることを選択させた三島の業績は、
東洋的審美眼こそを尊ぶ立場からすれば、百害あって一利ないものであった。
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