もっとも重要な人間関係としての「三綱(君臣の義、父子の親、夫婦の序)」、
その三綱を上三つとする「天下の達道(君臣、父子、夫婦、兄弟、朋友)」などが、
王化の引き締められた世の中においては特筆してて重視されるが、諸国諸侯が
覇権を争う乱世においては、このような順当な人間関係への尊重は全く疎かになり、
「知人か、さもなくば他人か」というほどにも、希薄な人間関係しか成立しなくなる。
一旦、利害が相反することともなれば、殺し合う敵同士にすらなりかねない相手などと
そんなに緊密な人間関係を保つわけにもいかないからで、最悪、実の親子ですらもが
敵対関係におよぶほどもの事態になることすらある。かといって、人間関係に全くの
序列的体裁が存在しないのでは、世の中も立ち行かなくなるので、乱世だった中国の
春秋時代の「五覇」と呼ばれた大諸侯たちも、以下のような盟約を取り交わしていた。
「老を敬い幼を慈しみ、賓旅を忘るること無かれ」
「年上のものは敬い年下のものは慈しみ、遠方からの旅客でもいい加減には扱わない」
(権力道徳聖書——通称四書五経——孟子・告子章句下・七より)
これはあくまで、人間関係が希薄化した乱世における最低限の取り決めなだけで、
そんなに上等なものでもないわけだが、だからこそ、今のような春秋時代並みの乱世に
おいてですら遵守を要求できるものであり、質・量・古さの全てにおいて四書五経を下回る
犯罪聖書やその信仰者が、四書五経やその研修者を、「年下の相手」として慈しんだり
してはならず、代わりに「年上の相手」として敬わなければならない根拠にもなっている。
あくまで、乱世における最低限の取り決めの範囲において、年下のものが年上のものを敬い、
年上のものが年下のものを慈しむという、あまり上等でもない法則が絶対性を帯びる。
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